[書評/感想]ぐりとぐらの作家が贈る育児本「子どもはみんな問題児。」(中川李枝子著)

スポンサーリンク

IMG 2059

「ぐりとぐら」を今まで一度も見たことがない、読んだことはない、という人は、なかなかいないのではないでしょうか。本屋に行けば、たいてい平積みで置いてあるロングセラー絵本。

そんな絵本作家の中川李枝子さんは、実は17年間、保育園で保母として働きながら、いくつものベストセラーを生み出しました。「子どもはみんな問題児。」は、保母として、そして1児の母として、たくさんの子どもたちを愛情あふれる目で見つめ続けた彼女の初の育児エッセイです。挿絵はもちろん、ぐりぐらコンビでおなじみ、妹の山脇百合子さん。この本を読むと、今まさに1歳児の子育て真っ最中の母である私は、ちょっとくすぐったい気持ちになります。なぜなら、子どもたちがどんなにお母さんが大好きで大好きでたまらないか、教えてくれるから。

例えば

子どもの「お母さん自慢」には限りがありません。何でも自慢のタネなのです。「わたし、帝王切開で生まれたの」って、それだって立派な自慢です。
するとそれを聞いた子が「うちのママは盲腸切ってる」と自慢する。
もっとすごいというわけです。

十七年間保育園に勤めて何がわかったかと言いますと、子どもはお母さんが大好きということです。どの子もみんなかわいくて、帰宅させるのが惜しいほどの日々。三六五日、朝から晩まで子どもを預かっていたいくらいなのに、私は絶対にナンバーワンになれませんでした。
ナンバーワンはお母さんです。ナンバーツーがお父さん、スリーがおじいちゃんとおばあちゃんで、保育者なんてナンバーフォー以下だったでしょう。
女の子と男の子でくらべると、男の子はさらにお母さんにべったりです。

保育園で子どもを注意するとき、「そんなことをしたらお母さんが悲しむでしょう」というのがいちばん効きました。それは男の子も女の子も同じ。自分の好きな人を悲しませるわけにはいかないのです。そうやって子どもたちは、お母さんを通して世の中の大事なこと、いいことを覚えていくようです。ですから、私はお母さんはどこまで知っているかしら、こんなに子どもに愛されて幸せねと思っていました。

保育園でたくさんの子どもたちを見てきた保母さんがこういうのだから、きっと間違いありません。子どもがくれる無償の愛を日々感じています。

そして今が一番幸せな時なのだと、改めて教えてくれました。

今の時代、子育ては本当に厳しい。昔と違って核家族が増えて、仕事にも家庭にも100%を求められ、社会からの目も厳しい。子どもにイライラしてしまう日もある。保育園に行きたくない、とダダをこねる子どもに困り果てる朝もある。けれど、

そんな時おすすめなのは「あらそうなの、行きたくないのね」とか「じゃあ先生に、今日は保育園お休みしますって言いに行きましょう」などと話をしながら、とにかく保育園に向かうことです。子どもがあの手この手で来れば、こっちもあの手この手です。子どもには負けていられない、だから子育てはスリル満点、面白いのです。

こんな風に、ちょっと余裕をもっていられるといいのかも。

そしてやっぱり絵本作家ということもあり、絵本を読む、ということに関しての記述が多いです。

子育てには、「抱いて」「降ろして」「ほっといて」。子どもの発達に合わせた三段階があるといえるでしょう。「抱いて」は幼児期で、ちょうど保育園、幼稚園に来ている年頃まで。お母さんにとっていちばん子どもと幸せを共有できる時ではないでしょうか。
お母さんの膝の上で本が読める、この時代を大事にしてもらいたいのは、お母さんの感性が素直にまっすぐ子どもに流れるからです。
おはなしの世界はお母さんの言葉になり、体温になって子どもに伝わっていく。人生で最高に幸せなときだと思います。

子どもが成長して、「降ろして」といったら、降ろさなくてはなりません。さらに「ほっといて」といったら、見て見ぬ振りをしなきゃいけない。手出し、口出ししたいのをこらえるのです。
そういう段階が控えているわけですから、大切なことはやはり「抱いて」の時期、言いたいことを全部率直に伝えられるときに伝えておきたいものです。
あとで後悔しないように。

私も母に絵本を読んでもらった幸せな子供時代を覚えています。母が亡くなった今も、ときどき思い出すのは大人になってからのことではなく、あの幸福な幸福な宝物のような時代。そんな思い出を子どもにも残してあげたい。

他にもどんな絵本がよいか、逆にどんな絵本がくだらないか、手厳しく伝えてくれる章は、絵本選びに迷うお母さんにとっては必見。読むたびに新たな感動がある「新鮮さ」、精神的にすぐれた「誠実さ」があるもの、それから子どもにわかる「明快さ」がある本が良い本なのだそう。

さて、子どもらしい子ども、とはどんな子どもか。

大人にとっては問題児でも、むしろ、それこそが子ども。

どんな風にしつけるか、という大人にとって都合のいい育児本ではなく、どんな風に子どもとつきあえばいいのか、子どもとはどういうものなのか。中川李枝子さんのときには厳しく、そして海みたいに大きな子どもたちへの愛情を深く知ることができる一冊でした。

スポンサーリンク
この記事をお届けした
ヒトツムギの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!

シェアする

Follow

フォローする